ラグビーにおけるスクラム強化のための特異的筋力トレーニング

ラグビーにおけるスクラム強化のための特異的筋力トレーニング菅野昌明(愛知学院大学ラグビー部)
高田正義(愛知学院大学)
高津浩彰(豊田工業高等専門学校)

キーワード:スクラム、特異的筋力トレーニング、スクワット

○目的
アタック時のスクラムの安定は、セットプレーを有利にすると共に、有効なボールを供給する要因の一つとなる。これに対し、ディフェンス時のスクラムの支配は、相手の攻撃のオプションを奪い、効果的なディフェンスを可能にさせるといえる。すなわち、スクラムの有効性は、その後の試合展開に大きな影響を及ぼすものと考えられる。
一般的にスクワットは、ラグビー選手の下半身を強化する筋力トレーニングとして有効であるとされ、スクラム力の強化にスクワットが多用されている。    
特異性の原則に基づく筋力トレーニングの実施には、競技動作において活動する筋群に刺激を与え、さらに競技動作の関節角度、動作速度、筋活動様式に類似するエクササイズを選択することが重要であると示唆されている(Fleck and Kraemer,1988)。
 しかしながら、スクラムの動作特性を考慮した特異的なスクワットの検討は、現在のところ十分であるとはいえない。本研究では、スクラムを強化する特異的筋力トレーニング方法を模索するために、スクラムスピードとスクワットの関係について検討を試みた。

○方法
被験者は、筋力トレーニングを十分に行っている大学ラグビー部に所属するフォワード選手21名で、ポジションは、フロントロー9名、セカンドロー7名、バックロー5名であった。測定項目は1人の被験者が実際のスクラムに近い姿勢でスクラムマシンを最大努力で押す際のスクラムスピード(m/s)を、フィットロダイン(FiTRONiC s.r.o社製)を用いて測定した。また、大腿部の上面が床と平行になる姿勢までしゃがんだ状態から立ち上がるバックスクワット(BSQ)、膝関節屈曲90±10°位の静止姿勢から立ち上がるコンセントリック・バックスクワット(CBSQ)、膝関節屈曲90±10°位の静止姿勢から立ち上がるコンセントリック・フロントスクワット(CFSQ)の最大筋力(1RM)、を測定した。
スクラムスピードと3種類のスクワットの最大筋力(1RM)との相関を算出し、スクラム強化のための特異的な筋力トレーニング項目について検討した。

○結果と考察
スクラムスピードと3種類のスクワットとの相関係数を算出した結果、フォワード全体では、BSQ :r=0.77(p<0.01)、CFSQ:r=0.66(p<0.01)、CBSQ:r=0.64(p<0.01)の順に有意な相関を示した。
また、フロントローでは、BSQ:r=0.94(p<0.01)、CFSQ:r=0.81(p<0.01)、CBSQ:r=0.71(p<0.05)の順に有意な相関を示した。
 スクラムの関節角度の先行研究によれば、股関節は123 ± 24° 、膝関節は107 ± 13°、足関節は78 ± 11°であり(Quarrie and Wilson, 2000)、筋活動様式は下肢の諸関節を屈曲した状態から爆発的に伸展するコンセントリック筋活動あると考えられるため、下肢の関節角度や筋活動様式から3種類のスクワットの中では、CFSQが最もスクラムとの特異性が高いと考えられる。
 しかし、スクラムスピードとの高い相関を示した種目は、BSQ、CFSQ、CBSQの順であった。この結果は、BSQが年間を通じて筋力トレーニングプログラムに組み入れられているためであると考えられ、次にCFSQが高い相関を示したことは、フロントスクワットがスクラム力強化のための特異的な筋力トレーニングである可能性を示し、特にフロントローの選手においては有効な方法であると考えられる。

○まとめ
本研究の結果から、スクラム強化のためのスクワットトレーニングの有効性が示唆された。また、フロントスクワットとスクラムスピードのトレーニング効果については今後のさらなる検討が必要である。

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