相対的年齢効果を解消し、強化に繋がる育成システムについて

相対的年齢効果、育成システム、大会ガイドライン

桑田 大輔(生駒少年ラグビークラブ)

【目的】
現在、日本の男子競技スポーツの多くと、学校教育に、4~6月生まれ(春生まれ)のトップアスリートの人数が多く、1~3月生まれ(早生まれ・冬生まれ)に、少ない相対的年齢効果がある。相対的年齢効果は、競技スポーツの育成・強化にとって大きな影響を与える。
例えば、Aスポーツの春生まれと早生まれ(9ヶ月の月齢差)のトップアスリートの割合が、3:1とする。子ども達の成長差を、約6年と考えると、春生まれの早熟児と晩熟児(72ヶ月の月齢差)では、24:1となる。更に、春生まれの早熟児と早生まれの晩熟児では、上記の割合から、72:1となる。
トップアスリートになれる身体的・精神的な素質があるのに、月齢差や成長差によって72倍の差が発生する。これはトップ選手が600人いた場合、身体的・精神的に素質があってトップアスリートになる可能性のある選手は、20人以下ということだ。
身体的・精神的に素質のある子ども達を、育成することが、競技スポーツの強化に繋がる。その為には、相対的年齢効果を解消するような、育成システム・大会ガイドラインの構築が、子ども達の育成年代に必要だと考えた。

【方法】
多角的に子ども達が、身体的・精神的に素質に応じて成長し、競技スポーツの強化に繋げるための方法を検証する。

○スポーツの育成について
旧東ドイツで、1964年より全児童を対象とする統一的な適性診断と選手選抜システム「旧ドイツ民主共和国における適性診断の理論と方法(1)」(綿引勝美ほか)

○教育システムについて
フィンランド教育の変化による子ども達への影響について、OECD(経済開発協力機構)のデータ

○その他
日本ラグビー学会 第1回大会『生まれ月(月齢)による精神的なスポーツ活動への影響』、第2回大会『子どものスポーツ(学校教育)と習熟度別(能力別)編成による影響』、第2回大会『子どものスポーツと育成システムによる影響について』《桑田》

【結果】
☆学校教育の習熟度別(能力別)編成について
▲ 欧米諸国の小学校では成績「上位」「中位」「下位」のどのグループでも有効性はない
▲ 小学校・中学校でも学力格差は拡大し、学校全体の学力向上にはつながらない
▲ エリート教育を行っている国の成績は、エリート教育を行ってない国の成績より下回っている
   (▲佐藤学「習熟度別指導の何が問題か」)

☆スポーツ育成の能力別(習熟度別)編成について
△ 旧ドイツでは、1964より、ドイツ統一まで継続的に、全児童を対象とする統一的な適性診断と選手選抜システムが行われた 旧ドイツ体育大学(現ライプチヒ大学スポーツ科学部)
△ もっとも優れたパフォーマンスを発揮する青少年は、青年期や成人期になっても最高の選手である、ということが期待されるが、それはたいへん稀であるということがわかった
△ 低いレベルにあると判断された子どもがそのまま、低いレベルで推移するわけでもない
△『旧ドイツ民主共和国における適性診断の理論と方法(1)より』綿引勝美ほか

☆日本の学校教育・スポーツの育成
▽ 小学校5年生男子の公立と国立の平均身長差は、0.86cm、中学校2年生では、1.20cm、国立の子ども達の方が高い。
▽文部科学省「平成20年度 全国体力・運動能力、運動習慣結果について」より
ある一定の条件を満たした子ども達を中心としてシステム化され、多くの子ども達にとって非効率なものとなっている。

☆強化に向けた育成システム
○ 高校野球連盟システム
○ バレーボールシステム(ローテーション)
○ ハーフ&ハーフシステム
○ ダイヤモンド30(釣鐘型育成システム)
○ 素質主義(地域・家庭・経済・成長差などに関係なく)
○ お山の大将システム(井の中の蛙システム)

【考察】
日本の教育・スポーツの育成は、子ども達の身体的・精神的な成長より早過ぎるために、相対的年齢効果に代表されるような現象が発生する。そのような環境のもと、日本国内でトップアスリートになったとしても、世界的な観点からの強化には繋がらない。子ども達の累進的な成長に符合した育成システムが必要だ。

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