ラグビー語 活用の多寡 ~ 指導者へのアンケートから ~

星野繁一(龍谷大学短期大学部)  髙木應光(神戸外国人居留地研究会)

キーワード : 不祥事  ラグビー語  倫理・道徳観

【目的】
最近、スポーツマンの不祥事が多発しているが、ラグビー界でも他人事ではない。ラグビー指導に当る私たちが、学生や子供たちにどのように接しているかが問われるのは当然だろう。
一般に指導は「心・技・体」の3分野にわたるといわれるが、不祥事に関わるのは「心」の分野である。ところで私たちは、いったいどのような言葉を活用して「心」の指導しているのだろうか。
ラグビー界で重視される言葉が、果たして活用されているのだろうかを調べてみた。

【調査方法】
京都府と兵庫県のラグビー協会に所属する高校生、中学生(含ラグビースクール生)、小学校・高学年を指導する顧問教師、コーチ等に回答してもらった。アンケート内容は、ラグビーの「心」の指導で使われそうな言葉・語句84ケを列挙し、その中から複数(いくつでも可)の言葉・語句を選択してもらった。
全回答者数229、その内訳は、高校指導者69、中学指導者38、小学校・高学年指導者79。
その他、小学校・低学年指導者22、幼児指導者9、クラブ指導者12であった。

【結果と考察】
1)集計上位の言葉・語句:上位10位までの言葉・語句は、次のとおりである。
  1位:集中力:130(回答者数、以下略)、
  2位:考えろ:117、
  3位:全力:116、
  4位:あきらめるな:93、
  5位:前へ:87、
  6位:自信を持て:83、
  7位:コミュニケーション:79、
  8位:頑張れ:76、
  9位:やる気:75、
  10位:楽しんで来い:74、ラグビーはタックル:74、
上位の言葉・語句は、ラグビーに限らず他の種目でも、また一般的にも活用される言葉が大半で、やっと10位にラグビーらしい言葉が「ラグビーはタックル」が現れる。
指導中にラグビー的な言葉・語句が、活用されることが少ない。

2)低位のラグビー語:ラグビー界で高い価値を置かれていると思われる言葉・語句を以下のように12ケ定め集計した。
  正々堂々:44位12(回答者数、以下略)、
  ノーサイド:42位13、
  犠牲的精神:61位6、
  フェアープレー:24位31、
  スポーツマンシップ52位9、
  One for All , All for one.:32位17、
  For the team.:58位7 、
  リーダーシップ:44位12、
  ラグビーはタックル:10位74、
  卑怯なことをするな:30位18、
  楕円球は人生を表す:78位1、
  グッドルーザー:70位3、
であった。
「ラグビーはタックル」(10位)以外は30~32位がせいぜいで、多くが下位にある。
このように指導中におけるラグビー語の活用が少ないと言えるだろう。

3)他種目経験者との比較:A指導・経験がラグビーのみの指導者とBラグビー以外の種目にも指導および経験があるラグビー指導者、の2グループに分け、彼等が指導中どれぐらいラグビー語を使用しているかをクロス集計したが、有意な差はなかった。

  A.ラグビーのみ71 人 B.他種目も   115 人
内、ラー語活用者 8 人11.3 % 15 人   13.0 %

 (ラー語:ラグビー語の意)

【まとめ】
中間発表の段階で結論めいたことは言えないが、ラグビー語の活用が10%強ぐらいで、非常に少ないといえるだろう。
日本ラグビーの父・クラーク先生は試合後「ファインプレーをしたか?」ではなく、「フェアープレーをしたか?」を常に問うたという。
日本ラグビー界が伝統的に持つ価値ある言葉・語句をラグビーの指導中に活用することが、若きラガーマンの倫理・道徳観の向上に役立つと思うのだが・・・。
皆さんはどうお考えでしょうか。