高校ラグビー選手におけるメンタル・コーチングについて

高田正義(愛知学院大学)

キーワード:メンタルコーチング、大会直前、自信の形成

【目的】
第3回日本ラグビー学会において、ラグビー選手におけるメンタルトレーニングの短期的効果について報告をした。その際、介入が短期的であるが故、トレーニングという概念は不適切であると述べた。アプローチとしては、コーチングまたはコンディショニングと考えるべきであろう。精神的エネルギーのコントロール方法や試合前の心理的準備は、経験値が大きく影響するといえる。したがって、試行錯誤によってそのスキルを獲得することが一般的である。しかしながら、目前に試合が差し迫り不測の状態が生じた場合には、科学的なサポートが解決の糸口を与えるものだと考えられる。
本研究は、インターハイ出場チームが大会直前に監督不在となり、4日間のメンタルコーチングを行うことにより、どのように意識が変化したのかを検討するものである。

【手続き】
日   程:平成22年12月25日~28日
場   所:大阪府某ホテル
対 象 者:○○県代表チーム
プログラム:以下参照

  1. 現状分析(自己分析、チーム分析)
  2. メンタルトレーニングの概要説明
  3. 目標設定(結果目標、パフォーマンス目標)
  4. セルフコントロール(呼吸、感情、認知)
  5. リラクゼーション
  6. ルーティン(生活ルーティン、パフォーマンスルーティン、思考ルーティン)
  7. セルフトーク
  8. アファーメーション
  9. コンディショニングチェック(身体、心理)
  10. プラス思考
    など。

【結果と考察】
メンタルコーチングを受ける前と後では、全選手(100%)が考え方や練習に変化があったと答えている。図1に示されているように、「リラックス」、「集中」、「自信」など、集団が積極的に活動する為に有効であると考えられる要因に変化があった。

図1

試合直前であった為、選手は積極的にメンタルコンディショニングに取り組んでいたと考えられる。徐々に、考え方が試合に対してポジティブな方向へと変化していった。今までの努力が正しかったこと、試合で力の全てを出し切ることが浸透していき、自然に「自信」が形成されていった。

【まとめ】
 4日間の短期的メンタルコーチングにおいて、以下のことが示唆された。

  1. 全ての選手が、考え方や練習中の雰囲気に変化があったと回答している。
  2. 「リラックス」、「集中」、「乗り」、「自信」などの要因に影響があった。
  3. 今回のチームは「自信」を形成するプログラムが、有効であった。