高校ラグビーOB大会開催が出場者の競技復帰意思に及ぼす影響について

舩越 達也 (大阪国際大学)

キーワード : 高校ラグビー,競技復帰,スポーツイベント,スポーツの再社会化

Ⅰ.はじめに
ラグビー競技人口減少が著しい我が国のラグビー界において、再び競技人口増加に転ずるためにはジュニア層からの競技参加者を獲得することが不可欠である。そのためには、日常よりラグビーを競技実施・継続しているプレイヤーの定着を図るだけでなくすでに競技から離脱した経験者を再び競技復帰させるような機会提供が重要であると考えられる。その機会としてのラグビー競技経験者の参加を促す競技イベントを効果的に開催することで競技復帰者の拡大のみならず、その競技復帰が次世代の競技者獲得に影響を与え、結果としてラグビー競技人口増加につながるといった効果について検証をしていくことが必要である。

Ⅱ.研究の目的
本研究では、現在競技から離脱しているラグビー経験者に競技復帰の機会を提供しているスポーツイベントに着目して、そこに出場するOBプレイヤーたちの意識を把握することにより、ラグビーにおける競技復帰を促す機会を提供するスポーツイベントの効果や課題を明らかにすることを目的とする。
また、競技離脱者に対するどのような働きかけがこのようなイベントへの参加促進につながるのかということについて検討を行なう。

Ⅲ.方法
2014年4月27日に大阪・近鉄花園ラグビー場にて開催された「第10回昔なつかしの高校OB交流戦」において、参加者がどのような意識で大会に出場しているのか記述式アンケート調査によって把握した。
主な調査内容は、出場者の大会参加に至った経緯、競技を実施するために必要な環境、今後の競技継続意思、競技を実施する上で重視する条件などである。
アンケート調査は大会出場者全員に無記名式の調査用紙を配布してその場で回収を行ない、そこで得られたデータに対して統計アプリケーションソフトにより基本統計量を算出した後に、各変数との平均値の差の検定ならびにクロス集計などを行った。
これらの結果から、参加者の日常的な競技実施状況や本大会への参加経験有無といった属性の違いによる比較を行ないその特性について検討した。

Ⅳ.結果および考察
今大会での出場者には、現在も日常的にラグビーを競技している「復帰定着群」と今大会以外ではほとんどラグビーをプレーしていない「復帰未定着群」に分類できた。さらに後者を今大会に継続して出場している「復帰途上群」と今回始めて参加した「潜在復帰者」に分類して、競技経験者のそれぞれ3つのステージにおける意識特性を比較した。
その結果、日常的な競技実施状況によって「大会出場の理由」や「ラグビーを競技する理由」「出場に必要な条件」「競技実施時に重視する条件」において競技経験者の意識傾向に違いがみられた。また、今大会への参加経験有無によって「出場理由」「ラグビーを競技する理由」「出場に必要な条件」において同様に意識傾向の違いがみられたが「競技実施時に重視する条件」には大きな差はみられなかった。
各群における本大会出場者の次回大会への出場意思を示す割合は高く(94.2~100.0%)、一度の大会出場によってラグビー競技経験者の競技復帰につながる可能性がみられ、さらに「今後出場をやめる場合の理由」については出場者の属性による傾向の違いはみられなかったが、そこにラグビーという競技種目上の安全面における課題がみられた。
 これらのことから、競技経験者の競技復帰という行動変容としての再社会化につなげることを目的として、競技離脱者から今後さらに参加者の獲得・定着をしていくために本大会のようなスポーツイベントの継続的な開催は有効であると考えられる。さらに競技離脱者に対して安全な競技環境の提供や大会参加によって得られる効果について積極的にPRしていくことが新規参加者の獲得・定着につながるという期待ができる。