大学ラグビーの将来を考える -全国大学ラグビー選手権開催方式に着目して-

寺田泰人(名古屋経済大学短期大学部)、岡本昌也(愛知工業大学)、高田正義(愛知学院大学)

キーワード:全国大学ラグビー選手権、開催方式、地域リーグ

【はじめに】
第49回全国大学選手権は帝京大学が前人未到の4連覇という偉業を成し遂げた。一方、今回の大学選手権は従来の開催方式を大きく変更して行われた。今回の改訂は日本協会によると「大学選手権の試合数を増やして大学のレベルアップを図ること」がその目的ということだが、果たしてそれは達成できたのか?
本稿では、全国大学選手権の開催方式について過去の大会をさかのぼってみながら、それを検証すると同時に日本の大学ラグビーの将来について考えてみる。

【開催方式の変遷】
全国大学選手権が誕生したのは、長年続いた正月の東西大学定期戦シリーズに終止符を打って関東代表2校、関西代表2校の合計4校により、東西大学ラグビー選手権として開催された1964年度である。翌年には代表枠を関東代表4校、関西代表3校(関西第三代表は東海の優勝校と代表決定戦)、九州代表1校の合計8校に拡大し、また大会名称も全国学生ラグビー選手権と改称した。その後1993年度の第30回大会より出場校は16校に増え、今年度の第49回大会から19校となった。
加えて対戦方式も従来はトーナメント方式が当たり前であった。(2003年度の第40回大会だけは16出場校が第1回戦後、4チームずつのプールに分かれ、リーグ戦方式で対戦の後、準決勝からは再度4校によるトーナメント戦を実施した。)それが今回は従来と比べて大幅な変更を行った。
改訂のポイントは以下の3点である。
①出場校の拡大
②第1~第3段階のステージ制導入
③準決勝での抽選導入 
①出場校の拡大
これまでは関東協会枠、関西協会枠という地域ごとの代表決定戦に勝利しなければならなかった「東北・北海道代表」と「東海北陸・中国四国代表」という地方勢の代表を「大学選手権出場」というステータスに格上げし、出場校を全国に拡大した。
②第1~第3段階のステージ制導入
上記の「東北・北海道代表」、「東海北陸・中国四国代表」の2枠に「九州代表」の1枠とあわせた三地域代表枠の3校が「ファーストステージ(以下、1stステージ)」としてリーグ戦方式により対戦することとした。
 そしてセカンドステージ(以下、2ndステージ)は、関東大学対抗戦A上位5校、関東大学リーグ戦1部上位5校、関西大学Aリーグ上位5校に1stステージの優勝チーム1校を加えた16校で4プールに分かれてのリーグ戦方式により対戦することとした。
③準決勝での抽選導入
ファイナルステージは、2ndステージにおける各プール1位チーム4校が抽選によるトーナメント戦により優勝校を決定する方式となった。

【考察】
 今回の開催方式の変更については、すでにラグビー専門誌等でもその是非が検証されている。
 特にセカンドステージは新制度の核心部分といえるのだが、ここで導入されたボーナスポイントを含む勝ち点制と各所属リーグの順位によるアドバンテージポイントの採用については、疑問の声が少なくない。さらにセカンドステージからファイナルステージに勝ち進めるのが各プールの1位のみという点も結果的に消化試合を増やしただけではないかと指摘されている。
 また1stステージ開催に伴う地域リーグへの影響についても検証してみる。
例えば東海学生ラグビーリーグでは、従来は東海学生リーグを制した後、「中国・四国代表」と対戦し、さらに関西大学Aリーグ5位との代表決定戦に勝利しなければ大学選手権出場はかなわなかった。今回の新制度では、東海学生リーグの後、「中国・四国代表」との試合に勝利することで1stステージ出場=大学選手権出場というステータスが得られることになった。しかし、第3段階のステージ制を導入したことにより、大学選手権にかかる期間が長くなったにもかかわらず、準決勝以降の試合日程が従来どおりと変わらないために、1stステージ第1週の開始が11月第3週に設定されることとなった。それに伴い、東海学生リーグは11月第1週にA1リーグの優勝を決めざるを得ないこととなった。その他にも1stステージ出場校はそれまでの代表決定戦とは違い、関東、関西、九州という広範囲へ移動して試合をしなければならず、遠征費用はもとより宿泊先及び練習場所の確保等、あらたなハードルもクリアしなければならなくなった。
もちろん新制度がもたらしたメリットが無いわけではない。学会当日はさらに具体的な事例を検証しながら、今回の大学選手権開催方式変更の是非について論じたい。

日本ラグビー学会第7回大会のご案内

日本ラグビー学会第7回大会を下記のとおり開催いたします。

謹啓
会員の皆様には、益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、日本ラグビー学会第7回大会のご案内をご連絡いたします。
本学会の特徴を生かした、幅広い視野からのアプローチによる有意義な大会にしたいと考えておりますので、多数の方々のご参加を頂きますようお願い致します。
謹白
一般発表(口頭)、特別講演、シンポジウム、総会、懇親会等を予定しております。

■期日 平成26年3月29日(土)11:00~17:00

■会場 関西大学 第2学舎 1号館
〒564-8680
大阪府吹田市山手町3-3-35
阪急千里線「関大前」駅下車 徒歩5分

■大会概要
受付:第2学舎1号館5階 10:30~13:00
参加費:会員 1,000円 一般・学生 無料

○特別講演
「 *コーチング再考*忘れられたラグビーの原点」仮称
演者:高木應光氏 神戸居留地研究会

○シンポジウム
「日本ラグビーの礎となる中学生ラグビー」仮称

○定期総会

○懇親会:新関西大学会館〈4階〉レストラン「チルコロ」17:30~予定

【お問合わせ】
日本ラグビー学会HP:http://www.jsr.gr.jp

日本ラグビー学会第6回大会のご案内

日本ラグビー学会第6回大会を下記のとおり開催いたします。

大会プログラムはこちら⇒第6回ラグビー学会プログラム

謹啓
会員の皆様には、益々ご健勝のこととお喜び申し上げます。
さて、日本ラグビー学会第6回大会のご案内と要項をご連絡いたします。内容は一般研究発表、総会、講演会、シンポジウムを予定しております。
本学会の特徴を生かした、幅広い視野からのアプローチによる有意義な大会にしたいと考えておりますので、多数の方々の発表ならびにご参加を頂けますようお願い致します。
謹白

一般発表(口頭)、特別講演、シンポジウム、総会等を予定しております。

■期日 平成25年3月23日(土) 11:00~17:00(受付10:30~)

■会場 関西大学 第2学舎 1号館
〒564-8680
大阪府吹田市山手町3-3-35
TEL 06-6368-1121
阪急千里線「関大前」下車 徒歩5分

■大会概要
受 付:第2学舎1号館5階 10:30~13:00
参加費:会員 1,000円  一般・学生 無料

1. 一般発表(公募) 11:00~
(1)申し込み締め切り期日:平成24年12月22日(土)
こちらから登録して下さい。⇒一般演題申込みフォーム
(2)Supplement原稿締め切り期日:平成25年1月31日(木)
原稿は「日本ラグビー学会No,6(Supplement)」に掲載されます。
Supplement原稿の作成・提出については、発表者にご連絡いたします。
(3)応募資格
演者:日本ラグビー学会会員に限ります。共同研究者は会員以外でも構いません。
その場合、参加費1,000円を大会当日に収める必要があります。
(4)一般研究発表について
一般研究発表は、すべて口頭発表です。発表時間は10分で、質疑応答5分で行います。
発表形式は、パソコン(Windows版、Office2007)によるスライド発表、もしくは
資料を用いた発表のいずれかとします。
スライド発表の場合は、個人のパソコンの持ち込みは、時間の関係で出来ません。
発表データファイルをUSBメモリーで持参して下さい。

2. 特別講演  14:00~
「法律的観点から見たラグビーの諸問題」(仮称)
演者:スポーツ問題研究会代表、弁護士 辻口信良 氏

3. シンポジウム 15:45~
「ラグビースクールの未来像」(仮称)
-ラグビーはいいものだ、いいものは決して滅びないー

4. 定期総会 12:45~

■懇親会:新関西大学会館〈4階〉レストラン「チルコロ」 17:30~


【お問合せ】
日本ラグビー学会第6回大会事務局

〒564-8680
大阪府吹田市山手町3-3-35
関西大学 中央体育館内
日本ラグビー学会事務局
TEL 06-6368-1121
FAX 06-6368-1268
日本ラグビー学会HPから問い合わせ:http://www.jsr.gr.jp

ラグビーフォーラムNo.5

ラグビーフォーラムNo.5(2012年3月発行)
JAPAN RESEARCH JOURNAL OF RUGBY FORUM No.5 (March 2012)


〔原著論文〕

中・高校生ラグビー選手における外傷について

全国ジュニア・全国高等学校ラグビーフットボール大会実行委員会
外山 幸正、新井 達也、中村 夫左央、高折 和男、前田 憲昭・松本 学
〔研究資料〕

白州次郎のスポーツ観(後編)-ラグビー、ブランド化へのヒント-

高木 應光、星野 繁一

東海学生ラグビー連盟における競技力向上に向けた取り組み

寺田 泰人、岡本 昌也、高田 正義

日本聴覚障がい者ラグビー連盟(デフラグビー)に関する活動調査

千葉 英史、長田 耕治、落合 孝幸、柴谷 晋、小中 一輝、速水 徹
〔翻 訳〕
NEW ZEALAND RUGBY UNION PRINCIPLES OF RUGBY COACHING
ラグビーコーチングの原則Ⅴ
榎本 孝二

(氏名:敬称略)

日本ラグビー学会誌 「ラグビーフォーラム」No5
平成24年2月28日 印刷発行 非売品
発行者   日本ラグビー学会 会長     溝畑寛治
編 集   第3回大会委員         灘 英世
発行所   〒564-8680
      大阪府吹田市山手町3-3-35
      関西大学 身体運動文化専修 溝畑寛治気付
      日本ラグビー学会第1回大会事務局
      TEL&FAX T,06-6368-1144 F,06-6368-1268
印刷所   〒550-0002
      大阪市西区江戸堀2-1-13
      あさひ高速印刷株式会社
      TEL:06-6448-7521(代) FAX:06-6371-2303

サッカー・ラグビーの相対的年齢効果による差異について

桑田 大輔(生駒少年ラグビークラブ)

キーワード:相対的年齢効果、子ども、育成システム

【はじめに】
★【FIFA(国際フットボール連盟)創立100周年記念出版 フットボールの歴史】より、『口頭で伝えられているぐらいだったルールが初めて書き留められたのは1846年、パブリックスクールのラグビー校においてであった』『少なくとも1914年まではラグビーが冬のナンバーワンスポーツの地位を確保していた』★【500年前のラグビーから学ぶ、ラグビーの起源、そして日本の進むべき道】より、『1845年、あまり詳細なことには言及せず、概略をまとめたものにすぎないが、ラグビー校式フットボールのルールブックが完成する』とある事から、1845~6年に、初めてフットボール競技規則の原案が、ラグビー校で明文化された。同じ起源のルールから始まった、サッカー・ラグビーの育成システムを常に比較対照してきた。

【目 的】
 子ども達のサッカー・ラグビーの大会ガイドライン、育成システムには、大きな違いがあり、その他にも、日本の男子競技スポーツの多くと、学校教育に、4~6月生まれ(春生まれ)のトップアスリート(生徒)の人数が多く、1~3月生まれ(早生まれ・冬生まれ)に、少ない相対的年齢効果の研究データにも差異があるサッカー・ラグビーの相対的年齢効果による差異を多角的に検証する事で、子ども達が、身体的・精神的に素質に応じた成長を促進するような、育成システム・大会ガイドラインの構築がでると考えた       

【方法】
 サッカー・ラグビー・その他のトップアスリート・各年代の生まれ月を集計し、外国選手を除く・人口動態統計・日数割合も考慮した実数(デモグラフィック変数)に近い月別出生数表を作成する。多数の月別出生数表、各年代のスポーツ競技人口の推移と競技開始年齢・ポジションを調査し参照する

【結果】
サッカーJリーガーの春生まれと早生まれ(9ヶ月の月齢差・成長差)のトップアスリートの割合が、約3:1となる。子ども達の成長差を、約6年と考えると、春生まれの早熟児と晩熟児(72ヶ月の成長差・月齢差)では、24:1となる。更に、春生まれの早熟児と早生まれの晩熟児では、上記の割合から、72:1となる。
 Jリーガーになれる身体的・精神的な素質があるのに、月齢差や成長差によって72倍の差が発生する。これは、Jリーガーが600人いた場合、身体的・精神的に素質があってJリーガーになる可能性のある選手は、20人以下ということだ
 ラグビートップリーガーの生まれ月による年齢別月別出生数表に大きな差異は無く、相対的年齢効果の差異は小さい。ラグビーは、小学生以下の年代から競技開始しても、中学生・高校生から始めても、トップ選手になれる。先天的な要因の割合が多いことで、構成される競技スポーツのために、相対的年齢効果の差異が小さい

08トップリーグ選手 競技開始年齢別月別出生数表

【考察】
 サッカーは、子ども達の身体的な育成を優先させ過ぎ、個人の成長差が大きい時期に、精神的に影響を与える大会ガイドライン・育成システムに過多しているため、身体的・精神的に素質のある選手を、ほとんどJリーグに上げる事ができない。日本サッカーの強化には、身体的に成長差が大きい年代に精神的な影響を与えない大会ガイドライン・育成システムへの改革が必要だ
 ラグビーは、中学生以降に競技開始した選手が、トップリーグの6割以上を占める。ラグビー以外の、競技スポーツ選手の多くは、競技人口が中学生以降に数十倍に増加しても、小学生から競技開始した選手が、トップ選手になる。日本ラグビーの強化には、子どもの累進的な成長に符合した大会ガイドライン・育成システムへの改革が急務だ

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