東海学生ラグビー連盟における競技力向上に向けた取り組み

岡本昌也(愛知工業大学)、寺田泰人(名古屋経済大学短期大学部)、高田正義(愛知学院大学)
中村 司(名城大学)、篠田雅之(東海学園大学)、村瀬賢治(名古屋経済大学)
中本光彦(中京大学)、小澤良太(愛知学院大学)、青石哲也(名古屋大学大学院)

キーワード:リーグ再編、得点差、プレイオフ制

【目的】
2009年度の第46回全国大学ラグビーフットボール選手権大会は帝京大学が悲願の初優勝を飾った。また準優勝は東海大学で、この両チームによる決勝はどちらが勝利しても初優勝で大学選手権史上9校目の優勝校が誕生するという大会であった。一方、東海学生リーグ加盟校の大学選手権での戦績をみると、出場経歴を有するのは中京大学のみではあるが、1967年度の第4回大会に初出場して以来、1984年度の第21回大会までで12回の出場を果たしている。ところが、それ以降は1995年度の第32回大会、1998年度の第35回大会に出場を果たすにとどまっている。つまりこの10年来、東海学生リーグからは大学選手権に出場校を排出でていないのである。そのような現状にあって、東海学生ラグビー連盟では、リーグ全体の競技力向上を目指し、さまざまな取り組みを行っている。ここではリーグ戦の対戦方式に関わる取り組みについてその成果を検証する。

【方法】
リーグ戦順位の上位チームと下位チームの対戦に着目し、その得点差を分析することにより、ゲーム内容(ゲームの質)を検証する。

【結果】
(1) 2004年度~2008年度
東海学生ラグビーリーグでは、2004年度よりAリーグのチーム数をそれまでの8チームから10チーム編成とした。この目的はリーグ構成チームを多くすることにより試合数を増やし、戦術面および選手層両面におけるレベルアップをAリーグ全体について図ることであった。5シーズンにわたり、このリーグ戦方式を実施したところ、全国地区対抗ラグビーフットボール大会において、2005年度の第56回大会より4シーズン連続して東海学生リーグ加盟チームが優勝するという成果をあげることができた。ちなみに1950年度の第1回大会から第55回大会までに東海リーグ加盟チームの優勝回数は8回である。しかしその一方、リーグ戦上位チームと下位チームの対戦では、得点差が100点を超えるゲームが数多く出現するなど、必ずしも期待通りの結果が得られたものではなかった。

(2) 2009年度
 2009年度からは、ミスマッチを減らし、接戦のゲームをできるだけ多くすることを目的に、前年度のAリーグ上位6チームをA1リーグとし、下位4チームにBリーグの上位2チームを加えた6チームをA2リーグとするAリーグ2部制を採用した。それに加えて、チームのピークパフォーマンスをシーズン終盤に発揮できることを目的として、A1、A2リーグともに6チームによる一次リーグを実施し、その対戦結果によるプレイオフ制(各4チームによるリーグ戦)を導入した。そしてプレイオフの結果により、全国大学選手権大会および全国地区対抗大学大会への出場校の決定、A1-A2リーグ間の入れ替え、A2-Bリーグ間の入れ替えを決定することとした。その結果、一次リーグでは大きな得点差がついた対戦も多少みられたが、プレイオフでは、大多数のゲームにおいて接戦となり、また最終順位においても一次リーグとは異なる対戦結果になるなど、当初の想定範囲を超える成果がみられた。

【まとめ】

  • Aリーグのチーム数を単に増やすという方法ではリーグ全体にわたるゲームの質を向上させるにはいたらなかった。
  • Aリーグ2部制およびプレイオフ制の導入は、まだ1シーズン実施しただけなので早計に結論を出すことはできないが、ある一定の成果が認められる可能性は否定できない。なお、ゲームの得点差などの詳細なデータについては、学会大会当日資料をもとに解説する。

NZにおけるジュニア(少年)ラグビーのシステムと運営

NZワイカト・ハミルトン地区のケース

西尾建(ワイカト大学)
宮浦成敏(ワイカトラグビーユニオン)

キーワード:ジュニアラグビー、Community Rugby Plan, Grassroots Rugby

【はじめに】
ラグビーワールドカップ日本招致が決まり、日本ラグビーも長期的な視点に立った強化、普及が必要になってきている。本発表ではNZクラブにおけるジュニア(少年)ラグビーの運営および活動内容についてNZラグビー協会の戦略のフレームワークで考えていく。

【NZ協会の戦略とジュニアラグビー】
NZラグビー協会は、コミュ二ティ・ラグビーを重視し7つの柱(1.Small Black rugby 2. Teenage rugby 3.Club development 4.Rugby World Cup 5.Coaching 6. Refereeing 7.Maori rugby)からなるCommunity Rugby Plan を作成し2008年から4年間で2200万NZドル(約15億4000万円/$1NZドル=70円)を戦略的にコミュ二ティ・ラグビーへ投資する方針を打ち出している。2009年も代表強化同様Strong Community Planの中で5才から12才までのラグビー選手の増加をひとつの目標として設定している。

【ワイカトのジュニア・ラグビーの活動と運営】
ワイカト・ハミルトン地区においての13才以下のラグビーに関しては、20のクラブからなるWaikato Central Junior Rugbyという委員会が運営。活動は1年ごとで、2月から3月にコミュ二ティ誌や学校で告知があり3月に体重測定と登録。活動はアンダー6(U6)から1年刻みでアンダー13(U13)まで。シーズンは、7月の冬休み2週間を除く5月上旬から8月下旬までで、平日に練習(週1回)、土曜日に試合(13試合)というサイクルで行われる。U6からU13の試合は午前中に行われる。ルーティン以外の行事としては、シーズン中にトーナメント戦およびエア・ニュージーランドカップ開幕戦での行進と試合観戦。U12,13に関しては上記の活動以外に選抜チームでのリーグ戦が行われるが、基本的にはクラブ単位の活動である。

【Development Plan とジュニアのコーチング】
コーチング、試合実施に関するガイドラインは、NZラグビー協会のDevelopment Planに基づいて作成され運用されている。U13までを、
1.Beginning Rugby (U6-7)
2.Learning rugby (U8-10)
3.Playing rugby (U11-13)
の3つのカテゴリーに分け、各カテゴリーは、年令別にさらに細かく分けられ指導、試合に関するガイドラインが作成されている。

【まとめ】
ジュニア・ラグビーがNZラグビー協会の戦略に沿って効率的に運営されている。特にDevelopment Planは、一貫した強化システムの基礎となるもので、各クラブが運用しやすいものとなっている。コーチは子供とのコミュニケーションを大切にし『ゲームを楽しむ、ラグビーを楽しむ』ということが主眼に行われている。活動はシーズン制(4ヶ月)で短時間(週2回/練習日1時間、試合日90分)であり、多くの子供がラグビーだけではなく他のスポーツも楽しんでいる。またスタジアム行進や試合観戦などトップ選手と触れ合う機会もあり子供の夢を育むという配慮もされている。

NZユース世代の強化ストラテジー

NZワイカト・ラグビーユニオンのケース

宮浦成敏(ワイカトラグビーユニオン) 
西尾 建 (ワイカト大学)

キーワード:強化育成システム、評価基準、スカウティング

【目的】
昨年日本で開催されたU20世界ラグビー選手権では、参加国のユース世代のレベル高さが証明され、ユース強化の重要性を再認識させられた。本発表においては、世界トップレベルのNZラグビー選手育成システムの現状を紹介し、今後の日本ラグビーのユース育成で生かせる要素、アイデアを探る。発表では、日本ラグビー強化育成プロジェクト(ATQプロジェクト)で実績があるワイカトラグビーユニオンでの16才から18才の強化育成システムとプログラムの事例を紹介する。

【選手強化育成の概要とプロセス】
アカデミーの選手たちは、14才から18才(ユース世代)の時期に競技力の向上とともにプロラグビー選手としての将来の選手像を意識し、自己管理や自己責任など社会的な規範も身につけて成長していく。NZのユース世代の強化においては、早期に選手の能力を見極め、その後各年代ごとに段階的に選手の能力を向上させていく強化育成プログラムが確立されている。ただアカデミー選手選抜に関しては単年評価であり、同年代との厳しい競争の中でお互い意識しながらプロ選手を目指している。

本発表においては、ワイカト・ラグビーユニオンにおけるユース世代強化ストラテジーにおける、

  1. スカウティング、エリート強化・育成、選手評価、プロフェッショナルへの指導のプロセス
  2. 年代別の指導カテゴリー、そして選手とともに進捗度を確認し、成長過程のフィードバック
  3. 選手として意欲的な活動の実現を目指していくための目標設定

について、実際にアカデミーで使用されている例も交えて紹介、考察する。

【まとめ】
アカデミーでは、強化育成プログラムにもとづいて一貫した指導が行われている。指導の中で最も重視しているのは、選手とコーチ(指導者)のコミュニケーションである。各選手の技量の評価とフィードバックを通して、選手はきめの細かい目標設定を行い実行していく。またユース世代という人間的な成長段階でラグビーの技術だけでなく地域性、文化を理解し、これまで積み重ねてきた長いチームの歴史と対する理解も重視している。

ラグビーフォーラムNo.3

ラグビーフォーラムNo.3(2010年3月発行)
JAPAN RESEARCH JOURNAL OF RUGBY FORUM No.3 (March 2010)


〔論  題〕

高校ラグビー選手における外傷について

外山 幸正、吉田 亨、新井 達也、中村 夫左央、中山 正一郎、高折 和男、森本 清一、前田 憲昭、松本 学、北田 力

ラグビー選手の比体表面積によるパワーの評価

三野 耕

日本の大学ラグビー選手におけるパワーに関する形態学的検討

三野 耕、河瀬 泰治、石指 宏通

1930年の日本代表カナダ遠征についての一考察

西脇 満

デフラグビーに関する基礎調査研究

寺田 泰人、寺田 恭子、岡本 昌也、高津 浩彰、小中 一輝、金子香織

ニュージーランドにおけるジュニアラグビーについて

(ワイカト地区のケース)

西尾 健

「ラグビーはサッカーから生まれて」のではない

高木 應光、星野 繁一

NEW ZEALAND RUGBY UNION PRINCIPLES OF RUGBY COACHING
-ラグビーコーチングの原則Ⅲ-

翻訳:榎本 孝二
(氏名:敬称略)

日本ラグビー学会誌 「ラグビーフォーラム」No3
平成22年2月28日 印刷発行 非売品
発行者   日本ラグビー学会 会長     溝畑寛治
編 集   第3回大会委員         灘 英世
発行所   〒564-8680
      大阪府吹田市山手町3-3-35
      関西大学 身体運動文化専修 溝畑寛治気付
      日本ラグビー学会第1回大会事務局
      TEL&FAX T,06-6368-1144 F,06-6368-1268
印刷所   〒550-0002
      大阪市西区江戸堀2-1-13
      あさひ高速印刷株式会社
      TEL:06-6448-7521(代) FAX:06-6371-2303

ラグビーフォーラムNo.2

ラグビーフォーラムNo.2(2009年3月発行)
JAPAN RESEARCH JOURNAL OF RUGBY FORUM No.2 (March 2009)


〔論  題〕

「ラグビーの父」クラーク先生 横浜から神戸へ

高木 應光、星野 繁一

パブリックスクールにおけるラグビー定着過程に対するスポーツ哲学的一考察-内在的・外在的価値の観点から-

西脇 満

ラグビーフットボールにおけるルース・プレー時の防御に関する実践的研究

勝谷 実嗣、溝畑 潤、三野 耕

ラグビーフットボールに於ける骨折について

外山 幸正、北田 力、中村 夫左央

「紳士育成」を目指した実践例

早瀬 剛、山崎 秀子

NEW ZEALAND RUGBY UNION PRINCIPLES OF RUGBY COACHING
-ラグビーコーチングの原則Ⅱ-

翻訳:榎本 孝二
(氏名:敬称略)

日本ラグビー学会誌 「ラグビーフォーラム」No2
平成21年2月28日 印刷発行 非売品
発行者   日本ラグビー学会 会長     溝畑寛治
編 集   第2回大会委員         灘 英世
発行所   〒564-8680
      大阪府吹田市山手町3-3-35
      関西大学 身体運動文化専修 溝畑寛治気付
      日本ラグビー学会第1回大会事務局
      TEL&FAX T,06-6368-1144 F,06-6368-1268
印刷所   〒550-0002
      大阪市西区江戸堀2-1-13
      あさひ高速印刷株式会社
      TEL:06-6448-7521(代) FAX:06-6371-2303

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