10mスプリント走とスクワットジャンプパワーの関係

10mスプリント走とスクワットジャンプパワーの関係

菅野昌明(愛知学院大学ラグビー部)
高田正義(愛知学院大学)

キーワード:10mスプリント走、スクワットジャンプ、スプリットスクワットジャンプ、ピークパワー

【目的】
トップレベルのラグビー選手における1試合でのスプリント走の総距離は、バックス(BK)が253m、フォワード(FW)が94mで、1試合当たりの平均スプリント走回数はBKが19回、FWが14回との報告がある(Duthie,2003)。
この研究を基に1回当たりのスプリント走の距離を算出するとBKが13.3m、FWが6.7mとなり、ラグビー選手には、10m前後の距離でのスプリント能力が要求されることが示されている。
阿江ら(1995),伊藤ら(1992,1998)は、スプリント走速度の向上には、下肢伸展・屈曲パワーが重要であると報告し、Mcbride et al(2000)は、軽負荷と高負荷とのスクワットジャンプの効果を比較した結果、20mスプリントタイムは軽負荷群が有意に短縮したと報告している。また岩竹ら(2008)は、スプリント能力に及ぼす要因は、片脚交互のジャンプ力、両脚同時のジャンプ力、脚筋力の順に重要になると報告している。
これらの報告は、スプリント速度の向上には脚パワーやトレーニング方法の特異性の重要性を示すものであるが、スプリント速度の向上に有効な爆発的レジスタンストレーニングの至適強度との関係は明らかになってはいない。
本研究は、10mスプリント速度とスクワットジャンプの至適強度との関係について調査することを目的とした。

【方法】
被験者は、大学ラグビーに所属する選手18名(年齢:19.1±0.96歳、身長:170.6±5.02cm、体重:86.1±13.1kg)で、ポジションは、フォワード10名、バックス8名である。
測定種目は、10mスプリント速度(VS10)、スクワット1RM(SQ)、垂直跳び(VJ)の跳躍高、20kgの負荷で行うスクワットジャンプ(SQJ)及びスプリットスクワットジャンプ(SSQJ)のパワーである。
VS10の測定方法は、スタートライン、10mラインの垂直線上に光電管(BROWER Timing Systems)を設定し所要時間を測定し速度を算出した。SQおよびVJは標準的な方法で最大値を測定した。SQJは、膝関節135°屈曲位の姿勢で、SSQJは両脚を前後に開脚し前後脚の膝関節が130±10°屈曲位の姿勢で静止した状態からジャンプ動作を行い、myotest(スイスmyotest SA社製)を用いてピークパワーを測定した。VS10と各測定項目との相関を算出し、有意水準は5%未満とした。

【結果と考察】
各測定項目の平均値および標準偏差は、VS10:5.32±0.26m/s、SQ:154.7±26.5kg、VJ:61.9±7.48cm、SQJ:44.2±4.65Watt/kg、SSQJ:35.1±4.74Watt/kgであった。VS10 とSSQJ、VJ、SQJおよびSQとの間で有意な相関を認めた(それぞれP<0.01 P<0.05 )。
これらの結果は、脚の発揮パワーとスプリントパフォーマンスとの間に有意な相関を示した先行研究(生田ら,1981、Mero et al,1981、Rusko et al,1993)を支持する結果となった。
また、スプリント動作は局面によって筋活動様式や主に活動する筋群が異なり、VS10においては、90%がコンセントリック筋活動で、主に大殿筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋が貢献していると報告されている(Delecluse et,al,1995,1997,Youg,1995)。
この研究から、SSQJやSQJ、VJは筋活動様式、筋群、動作様式がVS10と類似しているが、SSQJにおいては脚を交互に前後に振動する運動が含まれているため、スプリント動作との類似性の高さがより関係しているものと考えられる。
次に、SQJとSSQJの測定に用いたバーベルは、SQ1RMに体重を加算した重量(Total System Weight:TSW)の8.5±1.25%に相当する負荷であったが、TSW の上位群は下位群に比べて高い相関を示したため、TSWによってトレーニング強度を検討する必要性があることが示唆された。

【まとめ】
VS10の改善にはVS10との類似性が高いSSQJやSQJで体重当たりの脚パワーを向上させる必要があるが、トレーニング強度については、脚筋力や体重を含めた検討が必要である。

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