ラグビー選手の無酸素性間欠テストにおける追い込みとフィットネステスト能力の関係

高津浩彰(豊田工業高等専門学校) 岡本昌也(愛知工業大学)

【研究の目的】

現代のラグビーではフィットネス能力はプレーを行う上で必要不可欠な能力であり、15人がセットプレーを除く一般プレーで同等に動けることが求められる。一般的に、持久的能力はその生理的限界を迎える以前に心理的限界を迎えることが多い。持久的能力は、心理的限界を超え追い込んだ方が生理的限界に近づき最大限のパフォーマンスに近づくと考えられる。本研究では、ラグビー選手を対象に、限界までの追い込みの度合いと持久的能力の関係を調査する。

【研究方法】

調査対象は、A大学ラグビー選手38名うちデータに用いたのは30名(平均20.2歳 標準偏差1.27)であった。被験者は、心拍計(SUNTO)を装着しyo-yoテスト(無酸素性間欠テスト)を実施した。yo-yoテスト直前1分(yo-yoテスト実施直前の心拍数に用いた)、yo-yoテスト実施中、yo-yoテスト終了後1分のそれぞれの心拍数を時系列で計測した。図1に心拍数の変化の例を示す。1分の立位安静時の後にyo-yoテストを実施し、終了後再び立位安静状態を1分間保った。テストの開始に伴い心拍数は徐々に増加し最高心拍数に達した頃に被験者はテストを終了した。正しくテストを行わなかった被験者のデータは分析対象としなかった。


図1 yo-yoテスト実施時の被験者の心拍数の変化の例

yo-yoテストの往復回数と以下に示す調査項目との関係について検討した。調査項目は、学年、年齢、身長、体重、BMI値、体脂肪率、yo-yoテスト実施直前の心拍数(立位)、yo-yoテスト実施中の平均心拍数、yo-yoテスト終了時の最高心拍数(以下最高心拍数)、追い込み度(最高心拍数を予測最大心拍数で除した値)である。年齢から達成可能な最大心拍数(予測最大心拍数=220-年齢)を算出しパフォーマンス時の最高心拍数を除して、そのパーセンテージを追い込み度(%)とした。追い込み度が高いほど限界まで追い込んだことを示すと考えた。
また、心理的競技能力についても調査した。調査には、徳永らの心理的競技能力診断検査(DIPCA3)を用いた。心理的競技能力総合得点、各因子(競技意欲、精神の安定・集中、自信、作戦能力、協調性)得点、各尺度(忍耐力、闘争心、自己実現意欲、勝利意欲、自己コントロール、リラックス能力、集中力、自信、決断力、予測力、判断力、協調性)得点についてyo-yoテストの往復回数との相関についても調べた。

【結果と考察】

yo-yoテストと相関が0.5以上(中程度の相関)あった調査項目について表1に示す。体重、BMI値、体脂肪率、最高心拍数、平均心拍数、追い込み度(最高心拍数/最大心拍数)について中程度の相関が確認された。
学年、年齢、身長、yo-yoテスト実施直前の心拍数(立位)、心理的競技能力総合得点、各因子(競技意欲、精神の安定・集中、自信、作戦能力、協調性)得点、各尺度(忍耐力、闘争心、自己実現意欲、勝利意欲、自己コントロール、リラックス能力、集中力、自信、決断力、予測力、判断力、協調性)得点については0.5以上の相関がなかった。つまり、これらの項目はyo-yoテストの結果と関係がない可能性が示された。
体重、BMI値、体脂肪の身体特性とテストの結果に負の相関が見られた。この結果は、体重が重いほど、BMI値が高いほど、体脂肪率が高いほどテストの結果が良くなかったことを示している。身体特性がテスト結果に影響している可能性が示された。最高心拍数と正の相関が見られた。この結果は、テスト終了時の最高心拍数が高いほど結果が良かったことを示している。また、追い込み度とyo-yoテストの結果において最も高い相関が見られた。この結果は、追い込んでいた被験者がテストの結果が良かったことを示している。

表1 yo-yoテストと中程度の相関があった調査項目

【まとめ】

本研究は、持久的能力と追い込み度の関係を調査するものであった。その結果から、期待される生理的限界近くの状態に追い込むことができる選手が、試合に必要な持久的能力が高い可能性が示された。

日本ラグビー学会第10回大会のご案内

日本ラグビー学会第10回大会を下記のとおり開催いたします。

謹啓
会員の皆様には、益々ご健勝のこととお喜びいたします。
さて、日本ラグビー学会第10回大会の案内をご連絡いたします。
本学会の特徴を生かした、幅広い視野からのアプローチによる有意義な大会にしたいと考えておりますので、多数の方々のご参加を頂きますようお願い致します。
謹白

■期日:平成29年3月25日(土)10:00~17:00(開始終了時刻は予定)

■会場:関西大学 千里山キャンパス 第2学舎 1号館5階
〒564-8680
大阪府吹田市山手町3-3-35
阪急千里線「関大前」駅下車 徒歩約10分

■大会概要
受付:10:30 ~ 13:00
参加費:会員 1,000円  一般・学生 無料

■大会テーマ
「日本ラグビーの今後を考える」
歴史・社会学、発育発達、運動科学、安全・健康の各分野から提言する

○定期総会

○懇親会:新関西大学会館〈4階〉レストラン「チルコロ」17:00 ~

【お問合わせ】
お問合せはこちら

ラグビーフォーラムNo.9

ラグビーフォーラムNo.9(2016年3月発行)

JAPAN RESEARCH JOURNAL OF RUGBY FORUM No.9 (March 2016)


【原著論文】

第8 回ラグビーワールドカップ2015・イングランド大会における外傷
-視聴者からみた-

外山 幸正・泉 将康

大学生ラグビーフットボール選手における各種シャトルラン・トレーニングが間欠的持久力に及ぼす影響

河野 儀久

ACL 再建術のSTG/BTB 法の競技復帰後における経過及びパフォーマンスの差
淡路 靖弘・大西 健

ラグビーワールドカップを非英語圏で開催するということ
―開催都市の受け入れ環境を考える―

大西 好宣

個を生かす集団づくりの再考
-トマス・アーノルドの実践に着目して-

和田 剛志

【研究資料】

スポーツマンはジェントルマン
~「関西のスポーツの父」A.C シムに学ぶ~

髙木 應光・星野 繁一・西村 克己

「ラグビーの精神・歴史・伝統の理解」についての一考察

西村 克美・星野 繁一・髙木 應光

(氏名:敬称略)

日本ラグビー学会誌 「ラグビーフォーラム」No9
平成28年3月26日 印刷発行 非売品
発行者   日本ラグビー学会 会長     溝畑寛治
発行所   〒564-8680
      大阪府吹田市山手町3-3-35
      関西大学 千里山キャンパス 中央体育館
      日本ラグビー学会事務局
      http://www.jsr.gr.jp/
印刷所   〒550-0002
      大阪市西区江戸堀2-1-13
      あさひ高速印刷株式会社
      TEL:06-6448-7521(代) FAX:06-6371-2303
      http://www.ag-media.jp/

2015年度リーグ戦でのマネージャーによる試合内容分析に関する成果について

○河野 大、山川詩織、入江直樹、山田康博、三神憲一
(滋賀大学体育会ラグビー部)

キーワード:マネージャー、チーム力の分析

【目的】
今回我々は昨年に引き続きマネージャーが試合内容をビデオなどで試合内容を分析することでマネージャーが新たな役割を見出し、自発的かつ能動的にチーム力向上のために行動することができた。この役割は戦力向上に役立つだけではなく、他のマネージャーやケガで練習に参加できない選手にもやりがいを与え、チーム全体によい影響を与えることとなった。その内容を報告する。
【方法】
検討は2015年度関西大学Cリーグ戦9試合とDリーグとの入替戦1試合、計10試合で実施した。試合中に目視で確認した内容と試合後に記録映像にて次の項目について確認した。①試合中における実際のプレー時間、②そのボール占有率、③ラインアウトの成功率④個人別タックルの有効性、⑤個人別反則の数とその内容、などを調査した。その中でも個人別タックルの有効性について検討を行った。
【結果】
試合中のタックル選手ごとにその有効性においてS、A、B、C、D、Eの5段階で評価して集計した。10試合合計のタックル数が延べ出場選手数30名で1161回であった。その内訳はS:A:B:C:D:Eで45:19:457:369:90181であった。この分布がチームの結果にどのような影響を与えたのかを考えるために試合結果、得失点差などとの関係を調査した。その結果、
・失点差が大きい試合ではタックル総数が少なかった
・試合出場機会の多い選手は全タックルに占める有効なタックル比率が高かった
ということが示された。
【考察】
今年度よりCリーグに昇格し、試合数も増え、これまで経験したことのない身体能力と速さを持つ選手と対することとなり、想像はしていたものの、戸惑いの中でのリーグ戦であった。その中で、なぜ勝てないのかを考え、学生なりに模索する中で、勝てない理由、ボールをキープできない理由を考えることができた。ラグビーの基本であるタックルができなかったという事実を目の当たりにして新チームでチームの目標とともに個人目標としていかに身体能力を高めていくかを考える必要性を感じた。それを元にマネージャー一人一人が自分のできること、やらねばならないことを考え、体力強化のためのトレーニング方法の勉強、身体強化のための栄養補給方法の勉強などの課題を自ら掲げて、それを達成するための方法の検討を始めた。この活動が自ら考えて行動する習慣を会得するきっかけになったと思われる。

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